破壊的リーダーシップのリーダー中心論的研究:特性論(1) 3.ナルシスト 2)ナルシストと破壊的リーダーシップ
2)ナルシストと破壊的リーダーシップ
リーダーとなったナルシストは最初のうち魅力的に見えますが、部下との交流が進むと彼らの「誇大な自己顕示欲」や共感性のなさから部下からの支持を失い、結果として組織に負の影響を与える可能性があります。ナルシスト得点の高いリーダー(以下、ナルシストリーダー)は壮大なビジョンを示すことはできますが、実行力が伴うとは限りません。ビジョンを語る能力と行動計画をたて、それを着実に遂行する能力は別物だからです。またナルシストに見られる自己陶酔は他者と一緒に仕事をすることを妨げます。ですから何か意欲的な新しい計画を具体的で現実的なものとするとき、彼らは協力者を得にくいということもあります。
ナルシストリーダーの問題点は自分の能力が高いことを示すために非倫理的で、反社会的な行動を行う可能性がある点です。ナルシストの「特権性/搾取性」という要素は、自分は他者より優れているので特別扱いされるべきだという主張と関連します。そのような権利の主張はナルシストが仕事場などで、他者を攻撃したり、騙したりすることを正当化します。サイコパスと同様、ナルシストはいじめ、詐欺、ホワイトカラー犯罪(脱税・横領・使い込み・贈収賄など)、セクシュアルハラスメントを含むハラスメントを行いやすいことがわかっています。またリーダーの行動は、組織や部下に伝播するという傾向(さざなみ効果、cascading effect あるいは trickle-down effect)があります。リーダーの破壊的行動はさざなみ効果を通して組織に伝搬し、彼らのチームや組織の破壊的行動を引き起こしやすい組織文化を生み出していくのです。どのようにすればナルシストリーダーの反社会性を抑制できるでしょうか。この点に関してはまた別稿で議論したいと思います。
ナルシストがリーダーになりやすいとすれば当然、企業のトップまで上り詰める可能性もあります。この企業のナルシストリーダー、最高責任者(CEO)については最近、Narcissistic CEO(ナルシストC E O)という呼び方をされ研究が行われています。ただ今の段階ではナルシストC E Oと企業の成績,彼らと破壊的行動との関係について明白な結論が得られていません(Koch-Bayram & Biemann, 2020)。われわれはこの結果の不一致は測定法の問題だと考えています。ナルシストC E Oが部下や組織に及ぼす影響は時間的に変化するし,その変化は企業の職種,成熟度,環境等にも依存するので,ある特定の時点でC E Oのナルシスト得点と企業の成績などの関係を調べても両者の明白な関係を明らかにすることは難しいと考えられるからです。今後は時間的な変化を調べる研究が望まれます。
とは言え、ナルシスト得点とリーダーに選ばれる指標であるリーダー発現とリーダーとして集団をうまく率いる指標であるリーダー効率の関係について調べた研究によると、ナルシスト得点とリーダー発現には弱い正の相関が、ナルシスト得点とリーダー効率には相関がないことが示されました (Grijalva, Harms, Newman, Gaddis, & Fraley, 2015)。またリーダー発現の相関はリーダーと知り合ってからの時間が長くなると低下する傾向がありました。これらの結果は、ナルシスト得点が高いとリーダーになりやすいけれども、時間が経つとリーダーとして機能しにくいことを意味しています。またサイコパス得点の場合と同様に、ナルシスト得点とリーダーシップ効率には中程度の曲線的関係—ナルシスト得点が小さすぎても大きすぎてもリーダー効率が低く、中程度がもっとも効率がよい—ことも報告されています。
関連論文(Related Articles):
