破壊的リーダーシップのリーダー中心論的研究:人格特性論 1.人格特性論 1)破壊的リーダーシップ研究のいろいろ

1.人格特性論

1) 破壊的リーダーシップ研究のいろいろ

破壊的リーダーシップの定義は研究間で様々ですが、ここでは組織に損害を与えたり(不正取引、会計操作、文書偽造など)、構成員へ負の影響(暴力、いじめ、ハラスメントなど)をもたらすようなリーダーシップとしておきます。このリーダーシップに関する研究は、全体論的研究とリーダー中心論的研究に分けることができます(図1)。全体論では、リーダーだけではなく、部下や組織がどのように破壊的リーダーを作るかに着目します。一方リーダー中心論的的研究では破壊的リーダー個人の特性・特徴に注目する研究です。この研究はどんな特性を持った人が破壊的リーダーになりやすいかを調べる特性論と、どんな要因が破壊的リーダーシップを生むかを調べる要因論に分けることができます(図1)。

 

 

 

2) 人格特性論

人格の暗黒面(dark personality

特性論はさらに、どんな人格を持ったリーダーがどんな破壊的行動を行うかを調べる研究(人格特性論)とリーダーの破壊的な行動にはどんなものかを調べる研究(行動特性論)に分けることができます。本稿では人格特性論的研究のうち、人格の暗黒面と破壊的リーダーシップの関係について調べた研究を紹介します。人格の暗黒面と呼ばれる特性は、職場を含む他の人と交流するような場面で、傲慢で攻撃的に振る舞う,他者の迷惑を顧みない,人を騙すなどの問題行動を起こす人々の人格特性のことです。

ダークトライアッド(Dark Triad

人格の暗黒面特性の代表的なものは暗黒の三角形(Dark triad、以下DT)と呼ばれるものです。DTは、精神病質的傾向、自己愛傾向、マキャベリアニズムの3つの構成要素からなり、社会的に望ましくない人格特性であるとされています。これらの要素はお互いにある程度の相関があり、少数ながら全てのDT特性を示す(DT得点が高い)人物も存在します。かなり危険な人物と言えるでしょう。それぞれの特性の詳しい説明は別稿で行いますが、それぞれの特性を簡単にいうと、

・精神病質傾向(サイコパス傾向)とは衝動的で他者に残酷に振るまう傾向

・自己愛傾向(ナルシズム傾向)とは自分を過剰に偉大だと思い,他者に対して傲慢に振るまう傾向、

・マキャベリアニズム傾向とは自分の利益のために手段を択ばずに他者を操作する傾向、ということになります。他者に対する共感性に欠けるのがこの三者に共通してみられる傾向です。彼らは他者の気持ち、痛みが理解できないので自分の行動が周囲を苦しめても特に気になりません。

DT特性は一定程度の割合で見られる人格特性ですが、DTの高い人がリーダーになると組織や構成員に否定的な影響を与えます。精神病質的傾向の高い人物(サイコパス)、自己愛傾向の高い人物(ナルシスト)、マキャベリアニズム傾向の高い人物(マキャベリスト)のいずれもリーダーになろうとする(権力を志向する)傾向が強く、実際によりリーダーに選ばれやすいとされています。DT特性の高い人の職場での問題行動としては、たとえば、性的なハラスメントを行う傾向が高いこと、詐欺を行いやすいこと、非生産的業務活動を行いやすいことなどが報告されています。非生産的業務行動とは就業中に業務とは関係のない行動(たとえばネットサーフィンなど)を行う,仕事をさぼる,盗む、他者に言語的,肉体的な攻撃を加えるなどの行動です。