破壊的リーダーシップのリーダー中心論的研究:人格特性論 2. ”成功している”サイコパス 1)サイコパスの下位概念

2.”成功しているサイコパス”

日常会話でサイコパスというと、他者を冷血に殺していく連続殺人鬼のような印象があるかもしれませんが、サイコパスという用語は何も犯罪者だけに使われるわけではありません。使われる文脈で意味が少し異なる用語です。前稿で述べたように、精神医学の専門用語として使われるときと産業組織心理学で使われるときにも若干の違いがあります。精神医学で使われる「サイコパス」は、医者がその症状に応じ診断を行います。診断にはいくつかの診断項目があり、その中の一定の項目数以上の行動を患者が行なったとき、医者が「反社会性パーソナリティ障害」という診断を行います。その診断を受けた人々がサイコパス(精神病質者)と呼ばれます。前稿でも述べましたが、以下の議論で扱うサイコパスは必ずしも精神医学の治療対象となるような人々ではありません。

1)サイコパスの下位概念

心理学においてはDT心理検査と同様に、サイコパスを測定する検査もいくつか開発されています。検査の多くは質問紙法ですが、そこではいくつかの下位要素が仮定されており、それぞれの得点が測定されます。サイコパスの下位要素をどのように考えるかは研究者間で異なりますが、本稿ではPatrick, Fowles, & Krueger (2009) のモデルを紹介します。彼らはサイコパスを3つの下位要素の複合体として定義しています。それらは

脱抑制(disinhibition

大胆さ(boldness

・卑怯さ(meanness

の3つです。脱抑制とは衝動を抑制できないことであり、先見性、計画性のある行動ができない、我慢することができないことです。脱抑制は極端な場合、反社会的な傾向として、あるいは規則を破りたいという強い衝動として表現されます。彼らが規則を破るとき、いかなる罪の意識も感じないし、自責の念からそのようなことを繰り返すまいと思うこともないとされています。また薬物、アルコール依存症になりやすいなどがこの傾向と関連しています。

大胆さとは危険を感じるような状況でも平静でいられる能力です。大胆な人物とは、ストレス耐性があり、自分に自信をもち、恐れを知りません。この大胆さはサイコパスが危険を求め、危険を犯すことに不安を感じにくい、危険への感度が低いことを意味します。その結果、この得点の高いサイコパスは自分そして周囲を危険に晒す確率が高くなります。この危険に不安を感じにくいという特性はまた、「勇気がある」とか「リスクを取る」といった世の中で賞賛されるような行動を生みます。そのために人々はしばしばサイコパスを魅力的でカリスマ性がある人々と感じます。

卑怯さとは他人の気持ちを考えることなく(共感性に欠け)、他者を軽蔑し、騙し、他者に残酷に振る舞う行動のことです。この下位要素は傲慢で、他者に対する敵意が強く、他者に暴言を吐いたり、あるいは肉体的に攻撃したりする傾向も表します。残酷に振る舞うことで他者を支配しようとする傾向も、この傾向に含まれます。

認知的共感

またサイコパスの特徴の1つに認知的共感(cognitive empathy能力はあるけれども、情動的共感 (affective empathy) 能力がないということがあります。私たちは普通、他者と感情や意見を共有できます。たとえば子供を失った母親が嘆いている場面を見たとき、私たちは彼女の悲しみを感じ、いっしょに泣いてしまうこともあります。これが共感(empathy)と呼ばれるものです。共感には2つの側面があり、状況を理解して他者が今何を感じているか(母親が子供を失って悲しんでいること)を理解、記述する能力(認知的共感能力)と他者とその感情(たとえば母親の悲しみ)を共有する能力(情動的共感能力)です。サイコパスは他者に共感する能力は低いとされていますが、情動的共感能力はなくても、認知的共感能力を身に着けるものがいます。特に男性のサイコパスの中に多く見られるという研究結果があります。認知的共感能力があるということは、どのようにすれば他者の共感が得やすいかを知っていることになります。一般に、「他者の共感を得る」ということは他者を説得できる可能性が高くなるということです。ということは、サイコパスの中には他者の共感を制御でき、説得力の高い人物(たとえばプレゼンのうまい人物)が混じってくることになります。

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